ある秋の夜、山奥に住む一人の男がいました。
彼の名はタカシ。都会の喧騒から逃れるために山小屋を購入し、そこで静かな生活を送っていました。
しかし、その静寂は徐々に不安なものに変わっていきました。
ある晩のこと、タカシは床に就こうとしていました。
窓の外には満月が輝き、風が木々を揺らしています。
ふと、彼は奇妙な音を耳にしました。
それは、風が吹き抜ける音とは違う、低いうめき声のようなものでした。
「山の動物かもしれない」と、タカシは自分に言い聞かせ、布団をかぶりまし。
しかし、音は次第に大きく、そして近づいてくるようでした。
やがて音は完全に止みましたが、部屋の中に何かの気配を感じました。
タカシは心臓が激しく鼓動するのを感じながら、恐る恐る目を開けました。
目の前に立っていたのは、顔のない白い影でした。
その影はじっとタカシを見つめ、ゆっくりと近づいてきます。
恐怖で身体が動かなくなったタカシは、ただその場に立ち尽くすしかありませんでした。
影は彼の耳元で低く囁きました。
「ここは、俺の場所だ…」
その瞬間、部屋中の温度が急激に下がり、タカシの体は凍りつくような寒さに包まれました。
そして次の瞬間、影は突然消え、部屋には再び静寂が戻りました。
この出来事以来、タカシは決して以前のような平穏を取り戻すことはありませんでした。
何故なら、毎夜ごとにその影は現れ、彼の名を呼び続けたのです。
この恐怖に耐え切れず・・・最終的に、タカシは山を離れる決心をしました。
しかし、恐怖は終わる事はありませんでした。
その影は山を離れた今も、どこに行こうとも、追いかけてくるのです。
そして、彼の部屋に最後に残されていたのは、今までの出来事を記した日記帳と、
一枚の紙に描かれた不気味な影の姿でした…。