黒子の怪異調査記録 case.3-1/黒い人面石①(第3話)
「で、なんだよ見せたいものって」
Tに呼び出され近くの喫茶店に出向いた俺。
なんで休日に男と二人で喫茶店なんかに・・・
どうせ休日に暇な俺が悪いよッ!
「オカルトマニアのお前ならテンションあがると思って持ってきたのに、
なーんか不服そうだなぁ・・・みせねぇぞ」
「悪かったって!で、何だよ・・・その曰くつきの品とやらは」
「じゃん!」
Tがバックから取り出したのは、掌サイズの黒い石のようだった。
「石・・・?」
ツルツルしてる。
「裏見てみ」
言われるままにひっくり返す。
「うわっ!とっと・・・」
「おいおい!あぶねぇだろ!」
思わず声を上げて石を手放してしまった俺。
咄嗟にキャッチして事なきを得たが、客の視線が痛い。
「なんだこれ・・・人の顔・・・?」
両目の窪み、鼻筋・・・
そして苦悶に歪んだ口のようなもの・・・
映画のスクリームのような顔をした黒い石・・・
不気味だ・・・
「な!すげぇだろ?」
「これ、どうしたのよ」
「拾ったんだよ。河原で」
「え・・・ってことはこれ自然物なのか?」
「さぁ・・・ただその石は他の河原の石と比べて、質感は明らかに別モノだったぞ。
もちろん色もな。相当目立ってたもんで、拾い上げたら顔があるんでさ!おどろいちったよ」
い、今更ではあるが・・・
「・・・大丈夫なんだよな?これ・・・触っても」
「そんなの俺が知るかよ!まぁ・・・不気味なのは間違いないよな!
ってことで、やる!」
はぁ!?
いきなり何言い出すんだこいつ!?
「ちょ、待てよ!いらねぇって」
「はぁ!?オカルトマニアのお前に、わざわざ持ってきたんだぞ?
ホントなら金を取りたいくらいだぜ」
たのんでねぇよ・・・!!
てか、誰がこんな怪しげなものに金を出すか!
「・・・お前・・・」
「なんだよ?」
「俺を呪い殺すために用意した呪物じゃなかろうな?」
「・・・ぶっ!あーはっはっはっはっは!
なにそれ!真面目な顔で何言ってんだよ!呪い殺すってw」
流石にそれはないか・・・
Tを疑ったことよりも、呪物なんて口走った事が地味に恥ずかしい。
消えたい気分だ。
「じゃあな、用はそれだけだからよ。
お前の休日邪魔しても悪いし」
「俺は別に・・・まぁ、その・・・わざわざありがとな」
「いいってことよ!」
ありがとなってのも違う気がするが・・・
そういってTは支払いを俺に回し、去っていった。
俺は二人分のコーヒー代を払い、謎の黒い石を手に入れた。
今度あったら絶対おごらせてやる。
絶対にだ。
・・・・・・
・・・
「つーわけで、どう?何か感じるか?」
『・・・わかるわけないでしょう。私を霊能力者か何かと勘違いしているの?』
黒子に石の写真を送って電話で聞いてみたが、どうやらコイツもわからないようだな。
「悪かったな。ちょっと不気味だったから意見を聞きたかったんだよ」
『用はそれだけかしら?じゃあ私忙しいんで』
そういうと黒子はさっさと電話を切ってしまった。
相変わらずの無愛想。
「はぁ・・・どうすっかな・・・」
ヘタに捨てる事で何かあってもいやだし・・・
今のところ何か体調に変化があるわけでもないし、話のネタに持っておくかな。
・・・・
・・・
あれ、真っ暗・・・
どうやら眠っていたようだな。
すでに陽も落ちて、部屋は真っ暗。
「もう19時過ぎてるじゃないか。
はぁ・・・飯どうすっかな・・・」
こういう時に限って買い置きの食料も底をついているんだよな。
ため息混じりに冷蔵庫を閉めると、俺は近くのコンビニに向かって歩き出した。
「?」
何か違和感を感じつつもコンビニに向かう。
「今日はやけに静かだな」
!・・・そうだ。
何か違和感があると思ったら静か過ぎるんだ。
この時間、人通りはもちろんだが、近所の夜間工事の音もしない。
まるで、街から人が消えてしまったような・・・
「まさか・・・ね。とりあえずコンビニに行こうか」
自宅から徒歩10分もかからずにコンビニはある。
だが・・・どういうことだ・・・もう10分以上は歩いているにも関わらずコンビニにつかない。
「記憶ではこの道をまっすぐいった右手にあるはずなのに・・・
なんなんだこれ・・・人はいないし、音がしない・・・」
今更ながらに思った。
あぁこれは夢なんだ・・・と。
早く覚めてくれこんな夢・・・
・・・・
・・・
俺はコンビニを諦め、自宅に戻った。
おかしな話だが、踵を返した途端、ものの数分で自宅に戻れた。
まぁ・・・夢の中なのだから、どんな事が起きても不思議ではないのだろうけど。
「問題はどうやったらこの夢から覚める事ができるのかだよな」
とりあえず自分の意識があり、自由に行動が出来るようなので、スマホを見てみた。
「あれ・・・時間が進んでない」
起きた時確認した19時21分のままだ。
間違いない・・・これは夢だ。
「はぁ・・・どうすりゃいいんだよ。
あ!ネットは?ネットは見れるのか?」
ネットは見れた・・・が、流石に夢だけあって、自分の見たことのある内容だけしか出てこない。
例えばニュースやトレンドを見ても、今朝のものが最新トピックだ。
「あ、電話とかメールはどうなんだろう?」
夢なんだから自分の都合のいい展開になるだろうと思ったが、
普通に電話は通じず、メールも返ってこなかった。
「手詰まり・・・テレビは・・・見れないのね」
何故かテレビはつかなかった。
「なんなんだこれ・・・こんな意識がハッキリしてる夢なんて始めての経験だぞ・・・
早く覚めてくれー・・・」
ベッドに寝転びながら嘆くが、一向に夢から覚める気配がない。
「!・・・そういえば昼間のTから貰った石・・・
あれどうしたっけ?」
そうだ、確かバッグの中に・・・
「あった・・・」
特に見た目の変化はしてないみたいだけど・・・
この覚めない夢も、たぶんこいつのせいなんだよな・・・?
クソ・・・恨むぞT!
次回に続く!
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黒子の怪異調査記録 case.2-2/茂みの怪異②(第3話)
黒子の怪異調査記録 case.2-2/茂みの怪異②(第3話) 時間は既に0時を回っていた。人通りはなく、静寂が辺りを包み込む。 「ついてくるのは勝手だけど、何があってもしらないわよ」 俺はオカ ...
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